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高島のササニシキ 〜懐かしい「銀シャリ」の味をどうぞ〜

たかしま有機農法研究会では、「たかしま生きもの田んぼ米」として、コシヒカリとミルキークイーンを生産販売してきました。そして平成21年から、滋賀羽二重とあわせて、新しくササニシキが仲間入りしました。

■ササニシキとは

ササニシキササニシキは、1963(昭和38)年に宮城県古川農業試験場でハツニシキとササシグレを掛け合わせて誕生しました。コシヒカリと比較するとあまり粘らず、口どけの良さと滑らかなのどごしが特長の、あっさりとした食感が持ち味です。美味しいおかずを指して「ご飯が何杯でもすすむ」と言いなされた際のお米は、このササニシキの特長を表わしたものと思われます。昔ながらの「銀シャリ」の味は、このササニシキの味だといえるでしょう。

また、冷えても味が落ちにくいという特徴があります。そのため、寿司米や、お弁当に使用するお米としても最適です。ぱらぱらとほぐれやすい性質であるため、チャーハンや雑炊にも向いています。もちもちとした粘りが特徴のコシヒカリやミルキークイーンとは対極的な味わいといえる品種です。

■なぜ「幻の米」に

ササニシキは、かつてコシヒカリと並び「二大横綱」と称されるほどの人気ブランド品種でした。ピークの1990(平成2)年には20万haを超える面積(品種別作付面積で全国第2位、東北地方では第1位)で生産されていました。しかし、「気象被害を受けて倒れやすく、病気にも弱い品種」とされ、1993(平成5)年の冷害で大きな被害(収穫量の激減)を招いて以来、生産量が大幅に減少しています。東北の農家がいっせいにササニシキを見限り、「ひとめぼれ」などのコシヒカリ系統の品種に転換してしまったのです。(※)

また、コシヒカリは他の安価な品種とブレンドしても美味しさが失われにくいという特徴があるのに対し、ササニシキは100%使用でなければその美味しさを発揮できないという特性があります。このことが流通業者から「利ざやが少ない品種」として敬遠され、市場から姿を消していったとも言われています。

※【参考】宮城県古川農業試験場ウェブサイト
  http://ss.faes.pref.miyagi.jp/RICEvar/sasa.htm
  http://www.faes.pref.miyagi.jp/RICEvar/hitome.htm

■ササニシキは本当に「弱い品種」?

ササニシキが「収穫前に倒れやすく、病気にも弱い」という理由で東北の農家から敬遠されたのは事実です。しかし、それは農業の近代化が招いた「誤解」ともいえます。

ササニシキが生まれた当時は、まだ田植え機や化学肥料が広く普及する前の時代でした。誕生当時のササニシキは、丈夫な苗(成苗)に育てられてから1本1本手で植えられていたのです。ところが田植え機が普及すると、効率重視で小さな苗(稚苗)を5〜6本束にして植えるのが常識となりました。このことがササニシキにとって致命的だったのです。

ササニシキは「多分けつ型品種」の系統で、1本の苗が非常に多く株分かれするのが特徴です。たった1本の苗が、太くたくましい稲株に生長するのです。そのササニシキの苗が5〜6本もの束で植えられると、たちまち過密な状態になってしまいます。稲が密植状態になると風通しが悪くなり、イモチ病などの病気にかかりやすくなります。また、陽射しが通りにくくなると光をもとめて上に向かって延びようとし、結果的に茎が細く弱くなって倒れやすくなってしまいます。生長初期に化学肥料の影響で不自然に背が伸びると、この傾向はいっそう強まります。ササニシキはもともと弱い品種だったのでは決してなく、農業の近代効率化に伴う機械化や化学肥料との相性がよくなかったのだといえるでしょう。

■西日本でササニシキは育つか

ササニシキ私たち「たかしま有機農法研究会」のメンバーが、栃木県のNPO法人「民間稲作研究所」の農場で有機栽培されているササニシキと初めて出会ったとき、その太く立派な株がたった1本の苗から育ったと知り、成苗を薄く植えての有機農法ならササニシキも丈夫に育つのでは、「幻の米」をぜひ作ってみたい、と感じました。そして平成20年の秋、宮城県から「たかしま生きもの田んぼ」へ視察団が来られることになったとき、ササニシキの種籾を分けてもらうことになったのです。

東日本でなら、ササニシキは有機農法の成苗薄植えであれば丈夫に育つことは解りました。でも、西日本の滋賀県ではどうでしょう。火山灰土壌の東日本に対し、西日本の高島は粘土質が多い土壌です。なにより、ササニシキは高温障害に弱いという評判が気がかりでした。日照時間が長い西日本でササニシキが無事に育つのか、まったく予想がつきませんでした。でも高島は、日本海側の北陸地方と背中合わせの比較的冷涼な気候です。豊かな湧き水に育まれた琵琶湖北西部の清冽な水も味方になりました。初めての栽培としては、どうにか無事に育て上げることができたと思います。

■ササニシキの低アレルギー性

食物アレルギーのうち、米が原因となって起こるアレルギーには少なくとも2種類のタイプがあることが知られています。

1つは、従来から研究されてきた、タンパク質がアレルゲン(アレルギーの原因物質)であるタイプ。このタイプのアレルギーの方は、タンパク質を減らす処理をした低タンパク米や、玄米の表面を30%削った高度精白米ならば症状が出ることなくお米を食べることができます。

もう1つのタイプのアレルゲンは現在も研究が進行中ですが、特定の澱粉(でんぷん)質の可能性が高いとされています。このタイプのアレルギーでは、米の品種によってアレルギー症状の現れ方が異なり、祖先に「もち米」をもたない、粘りの少ない品種ではアレルギーを起こしにくいことがわかっています。(※※)

一般の飯用米である「うるち米」がアミロペクチンとアミロースの2種の澱粉質で構成されるのに対し、もち米は100%アミロペクチン(アミロース0%)です。うるち米も、近年の嗜好傾向ではアミロペクチンが多い(アミロースが少ない)ほど「食味が良い」とされています。主な品種別のアミロースの平均的な値は、ミルキークイーンで10%前後、コシヒカリが15%前後であるのに対し、ササニシキは20%前後と、アミロースの含有率が高いのが特徴です。

もちもちとした食感が人気のコシヒカリ等が祖先にもち米を持つのに対し、さっぱりとした食感が持ち味のササニシキは、祖先にもち米をもたない純粋なうるち米です。ササニシキはアミロースの含有率が比較的高いのにも関わらず美味しいのが特徴なのです。そのため、ササニシキならば一部の米アレルギーやアトピーの症状を持つ方にも、症状が出ることなくおいしいお米を召し上がっていただくことができると支持されています。

※※【参考】千野米穀店ウェブサイト(米アレルギーの発症原因と増加メカニズム)
  http://www.chino-grain.co.jp/yukistudy/19991111.htm

■JAS表示方法の改定について

滋賀県ではこれまでササニシキが県の奨励品種ではなかったことから、平成21年産のササニシキは穀物検査を受けた際の検査袋および直販小売用の米袋に記載されるJAS表記上の枠では品種名を「ササニシキ」と記載できず、米袋にも品種名や産地名を記載することができませんでした。 しかし、これまでの栽培実績を元に農林水産省の産地品種銘柄登録を受け、平成22年産米からは正式に「滋賀県産ササニシキ」と表示できるようになりました。名実ともに高島の大地に根をおろすことができたササニシキを、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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